LGBTをテーマにした映画を総じて「LGBT映画(クィア映画)」と呼ぶが、これまで多くのオープンリーLGBTの映画監督たちが素晴らしい作品を世に送り出してきた。
そこで今回は、オープンリーLGBTかつ、LGBT映画(クィア映画)を制作する、世界的有名な映画監督を一挙紹介!
アンドリュー・アン(Andrew Ahn)
アンドリュー・アンは、2011年に「Andy(原題)」を2012年に「Dol(原題)」というショートフィルムを発表して脚光を浴びた。「Dol」は、ロサンゼルスのLGBT映画祭にて脚本賞を受賞しており、アンは「両親にカミングアウトするためにこの映画を作った」と述べている。自身初の長編映画である「Spa Night(原題)」は2016年のサンダンス映画祭でお披露目となった。「Spa Night」は主人公であるデイビッドが、ロサンゼルスのハッテン場でセックスを通して自身のセクシャリティと向き合っていくという物語だ。アンは、韓国人のアイデンティティとゲイカルチャーを描き出す作品の製作に注力している。
デジレ・アッカバン(Desiree Akhavan)
自身の経験から着想を得て製作したという映画「ハンパな私じゃダメかしら?(2014)」は昨年開催された第24回東京国際レズビアン & ゲイ映画祭でも公開された2014年サンダンス映画祭出品作である。映画は、主人公のペルシア系アメリカ人女性のシリーンが、元カノとの複雑な関係と自身の性的アイデンティティ、伝統的な家族へのカミングアウトに悩む姿を映し出している。
ペドロ・アルモドバル(Pedro Almodóvar)
アカデミー賞を始めとする、世界の映画賞を総なめにするスペイン出身の映画界の重鎮といえば、ペドロ・アルモドバルである。アルモドバルは、ドタバタ茶番コメディーからメロドラマまで様々なジャンルと得意とする。彼の作品は女性に焦点を当たっているものが多いと思う人もいるかもしれないが、実はLGBTや性自認、キリスト教の暗い部分を描いた作品も多い。「オール・アバウト・マイ・マザー(1999)」「トーク・トゥ・ハー(2002)」「バッド・エデュケーション(2004)」「ボルベール〈帰郷〉(2006)」などは、レイプや虐待、近親相姦などの重たいトピックを絶妙に描き出している。
グレッグ・アラキ(Gregg Araki)
*ニュー・クィア・シネマの巨匠と言えばグレッグ・アラキだ。「ドゥーム・ジェネレーション(1995)」はアラキの作品で最もよく知られている。2011年に日本で公開された映画「カブーン!」はカンヌ国際映画祭でLGBTをテーマにした映画に送られるクィア・パルム賞を受賞している。
*ニュー・クィア・シネマ:LGBTのステレオタイプに捉われない描き方をしたクィア映画。この特徴は90年代以降のクィア映画に見られる。
ジェイミー・バビット(Jamie Babbit)
ジェイミー・バビットは「ギルモア・ガールズ」「Lの世界」「Looking(原題)」など、これまで様々な有名どころのテレビドラマのエピソードにおいて監督/製作に携わってきた。
しかし、バビットを好きな人なら彼女が監督/脚本を務めカルト的人気を博した映画である「Go!Go!チアーズ(1999)」を彼女の傑作として挙げるのではないだろうか。ホモフォビックな両親に「同性愛矯正施設」送りにされてしまう高校生の主人公メーガンが、自身のセクシャリティを探求していく姿は、1999年の映画公開当時、多くのセクシャルマイノリティの共感を呼び起こした。
ザル・バトマングリ(Zal Batmanglij)
脚本家で女優でもあるブリット・マーリングとコラボすることが多いバトマングリは、2011年に「Sound of My Voice(原題)」、2013年に「ザ・イースト」の脚本を共同で務めた。バトマングリは、今の所LGBTを題材にした映画の製作には携わっていないが、彼が製作に携わる映画はサンダンス映画祭で上映されるなど定評があり、今後が期待されている。
なお、サマーソニックや単独公演のために来日したことのあるロックバンド、ヴァンパイア・ウィークエンドを結成したロスタム・バトマングリは弟であり、兄弟ともにゲイであることをカミングアウトしている。
リサ・チョロデンコ(Lisa Cholodenko)
リサ・チョロデンコの作品で最も成功を収めたのは「キッズ・オールライト(2010)」である。同映画は「アメリカン・ビューティ(1999)」のアネット・ベニングと「アリスのままで(2014)」のジュリアン・ムーアが演じる結婚した女性同士のカップルと精子ドナーの父親を探す2人の子どもを描いたドタバタコメディだ。
チョロデンコは「キッズ・オールライト」以来長編映画の製作に携わっていないが、2014年に監督を務めたHBOのミニシリーズ「Olive Kitteridge(原題)」において、エミー賞と全米監督協会賞を受賞している。