「あなたにとって、愛とは、セックスとは、何ですか?」
本来、人も愛もセックスも多様であり、個人の恋愛を他人がジャッジするものではない。
「正面×愛とセックス」は、”普通に”生きるLGBT当事者の愛とセックスについて、赤裸々に語ってもらうインタビュー連載です。
── 20代 ゲイ 会社員 ──
ーあなたにとってセックスとは何ですか
セックスについて話すのって面白そうだし、特別に恥ずかしがる事でもないだろうし。皆も、こういうコトを真面目に話したいって思ってるんじゃないかなって。あと、自分を知ってもらいたいって気持ちもありますね。
高校生の頃は女の子と付き合ってて、セックスもしたんですけど何となくピンとこなくて。ただ、自分がゲイだって思ってなかったんです。でもあまりにもピンとこないから、もしかして?って思って、ネットで検索してみたりして。で、初めて男性を経験した時に、自分はゲイなんだなって思いましたね。肌を合わせた時の気持ちというか、テンションが全く違って。あぁこういうことかって。
今は初めて付き合った彼氏と同棲してます、付き合って3年で一緒に住みだしてからは1年くらいです。
彼氏が一周りくらい歳上で、仕事が忙しくて疲れてるみたいで。それに30代後半の人って、20代の頃に散々遊んだからもう落ち着きたい、みたいな人も多いですよね。今の彼の生活の中で、セックスの優先順位は低いみたいです。僕はちょっと寂しいですけど、もっとしたいって言うと相手にもプレッシャーになっちゃうしで少し悩んで、ある時期に話し合いました。今の頻度では満足出来ないけど、そんな理由で別れたくないって。とは言っても、隠れてするのは裏切るみたいで嫌だったんで、外泊した時はそういう風に思ってくれていいよって。
う~ん…公認なのかな…?止むを得ずって感じでしょうね。わざわざこっちも出かける時に公言はしないです。彼と別れる気は全く無いですけど、外への興味を完全に抑えることは無理かなって。魅力的だったり興味をそそられる人って、星の数ほどいるじゃないですか。だからまぁ…味見してみたいっていうと乱暴ですけど…気心の知れたセフレがいるといいなって。疑似恋愛じゃないですけど、そういう気持ちにさせてくれる友達が欲しいです(笑)
今のセックスの頻度を維持しつつ彼も外で遊ぶなら…お互いの気持ちがあるのが大前提ですけど、それなら僕は構わないです。正直、自分も外への興味を実際に行動に移してしまってるので、免罪符で許すんだろうってのもあるんですけど、気持ち的には半々ですね。やっぱり恋人が他の人とセックスするのってどんな理由であれ、気分は良くないですし。
ただ今まで一回だけ、この人と付き合いたいと思う人がいたんですけど、やっぱり彼が一番だなって。新しい刺激もそれはそれで良かったんですけど、今まで築いてきた二人の生活や安心感を天秤にかけた時に、それを手放したくなかったんですよね。外での行為は娯楽で、単純に楽しいだけだなって思ったんです。
そういう意味では外で遊ぶのと彼氏とは全然違います、気持ちが満たされますし、セックスをする度に自分の気持ちが確認出来るんです。そして、その後に気持ち良く眠れるのは彼だけですね。なんだろう?安心感なんですかね?より好きになれるって言えばいいのかな?なんだか、こうやって気持ちを言葉にするのって難しいですね(笑)
きっと、セックスする事によって自分の気持ちを確認したいんだと思います。相手を通して、自分の心を知る為の一つの手段なんじゃないですかね。
ーあなたにとって愛とは何ですか
恋って、ちょっと相手の何かを覗きたかったり知りたかったりっていう、コッチ側の一方的な欲求って感じで。愛はその先というか…先っていうと変かもしれないですけど、その欲求が尽きた時に、まだこの人と一緒に居たい思えるかどうかってことかなって。まだ僕も愛ってよくわかってないですけど、なんのなくそうなのかなって。
父親は僕に無関心で母親は過干渉で、お姉ちゃんは蒸発しちゃったりって家庭で。父親はもともと母親さえいれば良いって人で、子供はオプションみたいな感じだったんですよ。家に居場所が無いなって感じてました。こっちはコミュニケーション取りたくて話しかけようとしても、話しかける隙を与えてくれなかったり、聞こえないフリして無視されたりで。なので僕が自立して家を出た時、父はすごく嬉しそうでしたね。
小さい頃は憎いと思わなかったんですよ、不思議と。それが当たり前だったんで。優しくされたことがないから、優しくされるって何?て思ってました。虫の居所が悪かったりすると、いきなり引き摺り回されたりとか、腹パンされたりとか。でも、物心がついてからは違いましたね。憎いと思ってたのかな?憎いは言い過ぎかもしれないですけど、少なくとも、父親の役目ちゃんと果たせよ!とは思ってました。一時期、家に帰ってこなかったんですね。それで家のローンが滞納して、母親がその状況でどうしたら良いか解らなくなったのか、僕とお姉ちゃんを連れて無理心中しようとしたり…なんか色々ありましたね(笑)
今思えば、それだけ情熱的な人だったんですかね。どうでもいいなって思いながら、今死んじゃったらすごく悲しいです。一生話せなくなりますもんね。一言くらい文句言わせろよとか。そうですね…今話してて思ったのは、なんだかんだ父親の事が好きみたいです、僕。
そういう家庭に育ったからなのかな?なんか、人を嫌いになれないんですよ。
苦手な人はいるんですけど、僕が大嫌いな人でも、その人のことを大好きだったり大切にしてる人がいるんだと思うと、嫌いになりきれない。この人にも良い部分があるんだろうなって、自分が知らないだけで。1から100まで悪い人だったら心置きなく嫌えるんですけど(笑)良いところがチラッとでも見えたりすると、この人も人間なんだなぁって思ったり。
そういう揺れも含めて、全部を大切にしてあげるってことが愛なのかなって。
なんとなくボンヤリですけどそう感じてます。
2016年7月 撮影:宮本七生 / 聞き手:朴成理
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