アートを通じて、世界中のゲイ差別に問題提起をしている一人の韓国人アーティストがいる。
日本に5年間留学し、現在は韓国ソウル在住のナファンさん(Nahwan Jeon)は、クィアな作品で知られるオープンリーゲイのアーティストだ。
Fuck this Mountains(2016)|Nahwan Jeon
今回、新宿二丁目のドラゴン メンで、日本に住む外国人のための交流イベント「NOT ALONE CAFE」にトークゲストとして来日。
自身のクィアな作品性と、気になる韓国のゲイ事情についても教えてくれた。
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──ナファンさんの作品は、シンプルで個性的なイラストとクィアな作風で知られていますよね。作品のインスピレーションの源は何でしょうか?
僕の場合、大きく2つのテーマに分けて作品を作っています。
一つ目は、今を生きる性的少数者を描くポートレートシリーズです。
作品をどんどんつなげていって、大きな作品にしようと思っています。終わりを決めていないのでライフワークとして続けていく予定ですね。
二つ目が、ギリシャ神話にでてくるモンスター「サイクロプス」をモチーフにした作品。
サイクロプスは”一つ目”の奇妙な見た目から、差別と憎悪の対象でした。そんなクィアだったモンスターをモチーフにして、現代のクィアたちと照らし合わせて描いています。
*サイクロプスがモチーフの作品
Fuck this Mountains 2016|Nahwan Jeon
──作品では、米オーランド事件(*1) や韓国の兵役問題など、LGBTにまつわる差別的な事件を題材にしていますよね。これらの事件をアートとして表現する目的とは?
*1 オーランド事件:2016年、米フロリダ州オーランドのゲイクラブ「パルス」で起きた銃乱射事件。ホモフォビアによるヘイトクライム(憎悪犯罪)で49人が亡くなった。
差別的な事件についてですが、差別は言わないと知らないし、言わないと伝わらないと思っています。
オーランドの事件もそうですが、ゲイ差別的な事件をアートで表現することで、問題をみんなで話題にすることが目的です。
アートとしてシェアすることで、常に社会に問題提起をしていきたいと思っています。
*オーランド事件をテーマにした作品
Pray for Orlando 2016|Nahwan Jeon
──韓国には兵役がありますが、日本のゲイたちからするとイメージが湧きづらいです。兵役にまつわるゲイの問題は何かありますか?
兵役にまつわる問題は多々あります。
これは身近な人の話なのですが、性別適合手術を受けていないトランスジェンダー女性の場合、自分が女性であることを証明することはものすごく大変です。(兵役は男性のみの義務)
またゲイの場合、軍隊内で同性愛行為をした場合、2年以下の懲役になる差別的な法律があります。本当にバカバカしくて、ありえないですよね。
それをゲイたちは恐れていて、軍隊に入る時はゲイであることを隠しています。ゲイとバレると要注意人物入りされ、行動は監視されますから。
──軍隊の中では同性愛は違法行為にあたるんですね…。韓国全体のLGBT事情はどうでしょうか?
韓国ではカミングアウトしている人はそこまで多くなく、保守的な人が多い印象ですね。
それには、ネット社会になりSNS上でLGBTを攻撃する人が増えたからだと思っています。
SNSやメディアを通して差別的なことが発信されると、萎縮してしまうLGBTは多いですから。
──ソウルのプライドパレードを見ていると、キリスト教系のアンチLGBT団体との対立が見られますよね。
LGBT差別は主にSNS上で行われますが、普段ネットでしか見えないものが、パレードなどリアルな場所で目の当たりにすると、けっこうショックを受けます…。
その一方、パレードに参加することで、同じゲイの仲間がいることに勇気付けられます。一人じゃないんだって。
*今を生きる性的少数者を描くポートレートシリーズ
The Q (A group of Korean Queer youth No.2) 2018|Nahwan Jeon
──話は変わりますが、ソウルに遊びにいく日本人ゲイはとても多いです。最近ホットなスポットや、オススメの遊び方があれば教えてください。
ゲイたちの遊び方は日本と韓国は似ていると思います!ほとんど夜の文化ですね。
ソウルには二丁目のようなゲイタウンやストリートがありますし、みんな週末はゲイバーに行ってクラブで遊んで、発展場も行く、という感じです。
ソウルでオススメなのは、ゲイバーとクラブが集まるエリア「イテウォン」です。
イテウォンで最近ホットなクラブは、「TRUNK(トランク)」「KING(キング)」「HIM(ヒム)」の3つですね。全部同じエリアにあるので、クラブホッピングするのも楽しいですよ。
もう一つのゲイエリアの「チョンノ」では、同じくゲイバーが集まっていて、ストリート沿いに屋台もあります。
ナイトライフが充実しているので、ぜひソウルに遊びにきてください。
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現在、ナファンさんはソウルを拠点に活動しており、日本での個展予定はないそうだが、将来的に新宿二丁目でも個展をしたいと話していた。
彼のイラストが使用されている「NOT ALONE CAFE」のTシャツは、オンラインで購入することができる。
ナファンさんの作品は、公式サイトまたはインスタグラムでも見ることができる。